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日々の食生活丸見えです^^


by yaya_22

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今日子


洗い髪をとかしながら 話しかける。
‟今日も遅いね・・・”
鏡の向こうに、整えたままのBEDを見つめる。
‟今日も帰らないの・・・?”
鏡の中に視線を落として ため息。
‟・・・ふっ・・・”
もう、前ほど心乱れる事が無くなっていることに気付いた。
‟そう、もういい・・・・・・・・・寝よう・・・・”
帰らない人を待つのは、もう随分前にやめにしていた。


                               
 
                             ・・・・・・・・・やめたのかよ!







今日子 中学2年初夏

「今日子、トイレ行こう。」
振り向くと視線の先に中学2年にしては少し大人びた教子が笑って手招きしている。
一瞬、訝しげに顔を曇らせる今日子だが、小さくため息をついてから少し笑って
教子の方へと小走りに向かった。
この春から教子と同じクラスになっていた。
あの日以来、教子にイイヨウニ扱われている事を今日子は知っている。
小さな頃からあまり自分の気持ちを表に出した事がない。
気が小さい上に、人の意見が気になりすぎる自分に時々嫌気がさしていたが
それでも、そうしていれば、小さないざこざにさえも巻き込まれないでいられることを今日子は知っていた。いつでも、どこでも、我慢はつきものだとずっと思ってきた。
‟トイレぐらい一人で行ってよ!”
なんて決して言わない・・・。言ってはいけないのだ。

「キョーコ 今日の放課後付き合って欲しいんだけど・・・・」
「・・・・・・・・・」
最近即答しない今日子に少し歯がゆさを覚えていた教子が口調を強めてまた言った。
「だめ?」
教子もまた、相変わらずのわがままお姫様のままである。
「ううん・・・駄目じゃないけど・・・な~に?」
「うん、ちょっとさ・・・聞いて来て欲しい事があってさ~」
教子は少し含み笑いをして 今日子の顔を覗き込んだ。
「誰に?・・・・なにを・・・?」
今度は少し頬を赤らめて教子が言った。
「うん、・・・放課後にね・・・話す・・・」
「う・・ん。わかった・・・」
自分の席に戻って午後の授業の教科書の準備をしていると視線を感じた。
教子が少し微笑んで自分の顔を見ていた。
‟・・・・見るなよ・・・” 
そんな事・・・決して言わない。
その時、少し嫌な胸騒ぎがしたのだけれど 笑顔でうなずいた。

それぞれ部活や帰宅で教室の中には、窓際の今日子達と
廊下側の前の席に3人の男子がいるだけになった。
教子が小声で言う、、、
「私ね、とても気になる人がいてね・・・」
‟・・・どうか彰じゃ・・・ありませんように・・・・”
昼間の胸騒ぎのせいなのか、何故か神様に祈った。
「ふ~ん・・・いいじゃん!・・・誰?」
平静を装って聞いてみる。
「うん、、、中野君なんだけどさ・・・」
教子が微笑みながら顔を真っ赤にしていた。
ドキドキしていた・・・丁度お腹の上の辺りを何かに押さえつけられたようなそんなドキドキだった。
決してそれは、片思いの胸の高鳴るような鼓動ではなかった。

今日子にも、最近とても気になる存在の男子がいたそれは、中野彰である。
彰と今日子の家は数十メートルほどしか離れていない。
いわば彰は幼馴染のような存在の男の子だった。
子供の頃から公園で遊び、母親同士も仲がよく、買い物も、小旅行も
よく一緒に出かけた。親戚のようで、兄妹のようで、いつも一緒だった。
その幼馴染の彰のことを最近、異性として意識し始めていたのである。
‟・・・・・・・被った・・・”
「今日子は家が近いじゃない・・・中野君が私のことどう思ってるんだか聞いて欲しいの。」
‟・・・やだ・・・そんなの自分で聞けよ!”
そんな事、言えない。
「うん、近いけど・・・・・・でも、 中野君とは最近話さないから・・・」
やんわり断ってみるが、そんな事が通用するような教子じゃないのは分っていた。
「多分ね、中野君ってさ 私のことが好きだと思うんだ。」
「・・そうなんだ・・・じゃあさ、 教子自分で聞きなよ」
「ううん。」
大きく首を横に振る教子は続けてこう言った。
「だって 男子から言って欲しいじゃない・・・そういうことって。」
‟え?・・・なんでいつもそんな上から目線なんだよ・・”
言えない。
「・・・どうすればいいの?」
「うん、色々考えたんだけどね
・・・・中野君に恋人(彼女)を紹介してあげるという形で、私の名前を出して欲しいの」
‟は?・・・なに言ってるんだよ!・・・意味わかんない・・・”
言えないから、言わない。  だけど ムカついていた。
それでも黙って教子の説明を、笑みさえ浮かべて聞いていた。
頼み事は必ず聞いてもらえると思っている教子であり、
頼まれたら断る事のできない今日子だった。
また今日も、イイヨウニ使われる自分が惨めで情けなかった。
いつの間にか3人残っていた男子も 居なくなっていた。
教子から開放され一人になった教室でしばらく涙があふれて止まらなかった。
それでも、カバンに教科書を入れながら
‟帰ったら、彰のところに行かなくちゃ・・・”
そう思って席を立ち上がった。

だけどその日が、今日子の人生が決まる大切な日になることを、
                            そのとき今日子自信も知らなかった。


by yaya_22 | 2008-04-09 11:13 | Novel story(作り話)